認知症(dementia)
認知症とは一度獲得した認知機能が脳の障害により持続的に低下し、社会生活や日常生活に困難を来すようになった状態のことです。慢性あるいは進行性の脳の疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、概念、計算、学習、言語、判断など多角的な高次脳機能障害からなる症候群とされています。
認知症の診断ツールとしては問診型と観察式の2通りがあり、問診型では長谷川式簡易認知症評価スケールとミニメンタルステート検査(MMSE)などが代表的です。観察式はFASTなどがあります。
認知症は症候群であり70以上の疾患があります。アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4つの認知症で認知症の大部分を占めます(4大認知症)。最も多い疾患はアルツハイマー型認知症であり約6割を占めます。アルツハイマー型認知症は、認知機能の低下とともに身体機能も低下していき、最期は嚥下困難となり死に至る疾病で、その経過は10~15年程度です。
4大認知症の特徴
認知症の症状は、中核症状と周辺症状(BPSD)に分かれます。中核症状とは脳の病変により起こってくる症状であり、アルツハイマー型認知症の場合には、記銘力低下、見当識障害、実行機能障害などがあります。BPSDとは中核症状がもとになって起きてくる症状であり、行動症状と心理症状があります。行動症状としては徘徊、攻撃的な言動などがあり、心理症状としては、抑うつ、幻覚、妄想、焦燥などがあります。
認知症の治療は環境整備や介護対応などの非薬物療法が基本で、そのほか、音楽療法や玩具療法、回想法などの治療方法があります。アルツハイマー型認知症の進行を遅らせる薬剤として、わが国では4種類の薬剤(アリセプト、レミニール、リバスパッチ、メマリー)が承認されており、医療保険で処方することが可能です。認知症の治療では、認知症そのものの治療に加え、生活障害を少なくするための家族へのアドバイスや合併症の治療が大切です。社会資源の活用による家族支援や、本人の権利擁護のための成年後見制度活用などを積極的に行います。
かかりつけ医は、認知症の方が利用可能な地域の社会資源についての知識も豊富に持っておく必要があり、地域のなかの介護事業所や介護支援専門員(ケアマネジャー)とも意思疎通可能な状態にしておく必要があります。
認知症の末期においては嚥下障害が起こり、胃瘻を造設するかどうか?など意思決定支援をする必要があります。意思決定の話し合いには、直接介護に関与していない遠方の息子なども含め、なるべく家族の全員に参加してもらい家族のコンセンサスを得ることが重要です。
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、介護保険法に規定された専門職で、居宅介護支援事業所や介護保険施設に必置とされている職種です。介護支援専門員は、介護保険法第7条第5項において、『要介護者又は要支援者(以下、要介護者等)からの相談に応じ、及び要介護者等がその心身の状況等に応じ各種サービス事業を行う者等との連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有するものとして介護支援専門員証の交付を受けたもの。』と位置づけられています。
ケアマネジャーの多くは、居宅介護支援事業所や介護保険施設等で介護サービス計画(ケアプラン)の立案を担っています。在宅や施設で生活している方がたの相談に応じ、介護サービスの利用調整や関係者間の連絡などをすることで、利用者の心身の状況にあわせて自立した日常生活を営むことができるよう支援をしています。
介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)を受験するためには、受験資格を満たしている必要があります。具体的には、定められている業務について5年以上かつ900日以上の勤務実績が必要です。受験資格を満たして試験に合格し、介護支援専門員実務研修を受講し修了すると介護支援専門員の資格を取得できます。
コメント:父が要介護状態になった時に担当ケアマネさんに大変お世話になり、世の中にそういう職種があることを初めて知りました。定年退職後にもしかしたら介護施設で働くようなこともあるかもしれないと思い、ちょっと調べてみたところ、自分にもケアマネ試験の受験資格があることがわかり、衝動的に受験してみることを決意しました。半年ほどケアマネ試験対策のお勉強をしましたが、介護の世界は全く知らないことばかりで、意外に面白く楽しく受験勉強できました。ペーパー試験の方は何とか合格しましたが、その後なかなか実務研修を受ける時間が取れず、いまだにケアマネにはなれてません。実際のケアマネのお仕事は大量の書類作成をしなくてはならないので、事務処理能力の欠如した自分には全く向いてないことはよくわかってます。
参考文献:
1)介護支援専門員基本テキスト(八訂)、長寿社会開発センター、2018
2)アルツハイマー病のことがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 、新井 平伊 (監修)、2020
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