アルツハイマー病の進行を遅らせるために今できること

AD: Alzheimer’s disease DAT: dementia of Alzheimer type アミロイドβ(Aβ)

日本では認知症の人が2018年末時点で500万人を超え、その数はさらに増えていくものと見込まれています。認知症の約6割はアルツハイマー病が原因で起こります。アルツハイマー病が原因で起こる認知症はアルツハイマー型認知症といいます。アルツハイマー病では認知症発症の20年以上前から脳にβアミロイドが蓄積し始めて脳に病変が存在し、無症状で知らない間に徐々に進行します。進行したアルツハイマー病では脳が委縮し、認知機能が低下します。現代の医学ではアルツハイマー病の脳の病変を消し根治させる方法はありません。しかし、アルツハイマー病が始まっていても、生活改善などの取り組みによって、認知症の発症を遅らせることは可能です。認知機能低下を防ぐためには生活改善が重要です。認知症の発症前の段階ではアルツハイマー病かどうかの診断は難しいですが、生活改善は全身の健康を維持するためにも有効です。生活改善の取り組みが無駄になることはありません。

ランセット認知症予防・介入・ケア委員会の報告(2020)
認知症の患者数は世界で約5,000万人で、2050年までに3倍以上になると予想されています。特に認知症患者の約3分の2が住んでいる低中所得国(LMIC)で認知症の人は増加しています。2020年のランセットのレポートで、生活習慣における以下の12の要因を適切に対処すれば、世界中の認知症症例の最大40%を、遅れさせる、あるいは予防できる可能性があると発表しました。2017年の報告では①~⑨の9要因でしたが、2020年の報告では、主に高所得国(HIC)における最新エビデンスを分析し、⑩~⑫の3要因が追加されました。

認知症のリスク要因(ランセット、2020年)
・若年期:①中等教育の未終了
・中年期:②聴力低下、③高血圧、④肥満、⑤喫煙
・老年期:⑥うつ病、⑦社会的孤立、⑧運動不足、⑨糖尿病
・2020年の報告で追加されたリスク要因
⑩中年期の過度の飲酒、⑪中年期の頭部外傷、⑫老年期の大気汚染

政策立案者や個々人が以下のような方策を採り入れることを勧めています。
・40歳から収縮期血圧を130mmHg以下に維持することを目指す
・難聴の方の補聴器の使用を奨励するとともに、耳を騒音から守ることで難聴を減らす
・大気汚染や間接喫煙への曝露を減らす
・頭部の損傷を防止する(特にリスクの高い職業を対象に)
・減酒または禁酒をする
・自分自身の禁煙とともに他の人の禁煙もサポートする
・すべての子供に初等中等教育を提供
・適度な運動を続ける
・肥満とそれに関連する糖尿病を減らす

参考:
認知症について
アルツハイマー病とは?
レビー小体型認知症

参考サイト:
1)認知機能低下および認知症のリスク低減:WHOガイドライン、2019
2)認知症の予防、介入、ケア:ランセット委員会レポート、2020

参考文献:
1)アルツハイマー病のことがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 、新井 平伊 (監修)、2020
2)介護支援専門員基本テキスト(八訂)、長寿社会開発センター、2018

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