アルツハイマー病(AD: Alzheimer’s disease)
アルツハイマー型認知症(DAT: dementia of Alzheimer type)
βたんぱく アミロイドβ(Aβ)
認知症とはさまざまな原因で脳の神経細胞が破壊・減少し、日常生活が正常に送れない状態になることをいいます。認知症にはさまざまな種類がありますが、アルツハイマー型認知症が認知症の過半数を占め最も患者数が多いです。
アルツハイマー病は、「不可逆的な進行性の脳疾患で、記憶や思考能力がゆっくりと障害され、最終的には日常生活の最も単純な作業を行う能力さえも失われる病気」です。アルツハイマー病の全経過は30年間以上と非常に長く、最初の20年間は無症状期で、その後MCIの時期(5年間)を経て、最後にアルツハイマー型認知症を発症します。認知症期は10~15年間で、終末期は無言、無動、失禁、嚥下困難となり死に至ります。
「アルツハイマー病」は「アルツハイマー型認知症」発症の20~30年前から始まり、脳にβたんぱく(アミロイドβ)とタウたんぱくの異常蓄積を引き起こすものですが、βたんぱく蓄積開始後20年間ほどは無症状であり、その後5年間ほどもの忘れが主症状の「アルツハイマー病によるMCI(軽度認知症)」の時期があり、認知症を発症した後をアルツハイマー型認知症といいます。アルツハイマー型認知症は、徐々に進行して10~15年の経過で死に至ることになります。無症状の時期を含めた全期間がアルツハイマー病です。老化に伴ってβたんぱくの異常蓄積(老人斑)を生じることが、その後に続く認知障害の原因です。(アミロイドβ仮説)
このように、アルツハイマー病は脳内病変の出現から長い無症状期を経て、認知症の発症に至ることが明らかになってきました。すなわち、発症が80歳であれば、50歳台あるいは60歳台には脳病変がすでに存在していて、知らない間に病気が進行していることになります。この長い無症状期に、認知症の発症を阻止するような何らかの新しい治療方法が開発されることが非常に重要だと思われます。
アミロイドβ仮説
アルツハイマー型認知症の発症についての仮説で2010年に提唱されました。アルツハイマー型認知症の原因と考えられている仮説の中で現在最も有力と言われています。
1.たんぱく質を分解する酵素の働きの変化により、蓄積しやすいアミロイドβの割合が増えて脳に溜まり始める。
2.アミロイドβの毒性により、神経細胞やシナプス(神経細胞同士を繋ぐネットワーク)が傷つけられ、糸くずのような神経原線維変化を起こす。
3.傷ついた神経細胞が次々と死んでいくことにより、脳が委縮し認知症を発症する。
現在の新薬開発の主流は、このアミロイドβ仮説に基づいています。
参考文献:
1)介護支援専門員基本テキスト(八訂)、長寿社会開発センター、2018
2)アルツハイマー病のことがわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 、新井 平伊 (監修)、2020
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