不妊症診療における基本的考え方

現在の不妊治療では、体外受精・顕微授精を用いれば、体外での受精をほぼ確実に起こすことができます。しかし、その受精卵を子宮内に胚移植しても妊娠成立しないカップルの不妊原因として、受精卵そのものの妊孕性喪失子宮因子(着床障害)が考えられます。現代の不妊診療でまず考慮しなければならないことは、いったん配偶子(精子・卵子)が加齢により妊孕能を消失すると、現在の不妊治療では妊孕性を回復することは不可能であり、治療不能(絶対不妊)となってしまうことです。特に35歳以上の女性の場合、卵子妊孕性の消失により絶対不妊となる前に、必要であれば体外受精まで治療を行うことを考慮する必要があります。検査、タイミング法、配偶者間人工授精(AIH)などを施行して様子を見ているうちに、卵子の妊孕性が失われて絶対不妊となってしまうことは極力避けなければなりません。従って、適当な時期に、絶対不妊の危険性について、夫婦同席で十分な説明を行うことが重要です。

不妊原因の分類
現在の不妊症の原因は、生殖補助医療(ART)の有効性の観点から、①体内における受精障害、②配偶子・受精卵の異常、③子宮・母体側の異常、の三つに分類できます。

1) 体内における受精障害
 ・卵管閉鎖
 ・精子減少症
 ・ピックアップ障害(卵管が排卵された卵子を取り込めない病態)
⇒体外受精で挙児可能

2)配偶子(精子・卵子)・受精卵の妊孕性消失:
 ・卵巣不全(閉経)
  成熟卵子が得られない場合
 ・卵子妊孕性の消失(加齢)
  成熟卵子が産生されているにもかかわらず個体発生能を消失している場合
 ・高度精子無力症・無精子症
  精子が得られない場合
 ・遺伝子異常による不妊
⇒現在の医療技術では体外受精を用いても挙児不可能

3) 女性側因子(子宮因子)による着床障害:
 子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜ポリープ、子宮内膜菲薄化、子宮内膜増殖症、子宮腔癒着症などによって、着床が妨げられて妊娠が成立しない病態。
⇒外科的処置で妊娠が可能な場合と、挙児不可能な場合がある

参考文献:
生殖医療ポケットマニュアル、吉村泰典監修、医学書院、2014

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