経口排卵誘発剤

クエン酸クロミフェン(クロミッド®):
クエン酸クロミフェン(クロミッド®)は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であり、弱いエストロゲン作用と強力なエストロゲン拮抗作用を有する経口剤である。視床下部のエストロゲン受容体に対して内因性エストロゲンと競合的に結合することにより、エストロゲンによるネガティブフィードバックを阻害する。これにより、視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌を促進する作用がある。GnRHは下垂体からの黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促進し、その結果、卵巣を刺激して卵胞の発育を促進する。内因性のエストロゲン分泌が保たれている第1度無月経多嚢胞性卵巣症候群無排卵周期症の排卵誘発時に適応となる。月経5日目から50mg~100mg(1錠~2錠)/日を5日間連続服用する。クロミフェン®投与時は、卵胞径20~25mmまで発育してもLHサージが起こらないことがあり、その場合はhCGもしくはGnRHアゴニスト点鼻薬などで排卵誘起を行う。クロミッド®の排卵誘発率は60~90%と高いが、副作用として抗エストロゲン作用による子宮頸管粘液の分泌低下と、子宮内膜の菲薄化が問題となり、妊娠率は10~40%にとどまる。内因性エストロゲン分泌が低下している第2度無月経には無効である。したがって、クロミッド®投与で妊娠が成立しない場合には6周期を目処として中止し、ゴナドトロピン療法や体外受精へのステップアップを考慮する。

 クロミッド錠50mg、富士製薬工業株式会社

レトロゾール(フェマーラ®):
アロマターゼはアンドロゲンをエストロゲンへ変換する生合成酵素で、女性では卵巣顆粒膜細胞に主に限局するほか脳や乳腺などにも存在する。アロマターゼ阻害薬(レトロゾール)は全身のアロマターゼに作用し、アンドロゲンからのエストロゲン産生を低下させる。その結果、視床下部に対するエストロゲンのネガティブフィードバックが阻害され、視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌が促進され、卵胞刺激ホルモン(FSH)の産生が増加する。レトロゾールはアロマターゼ阻害薬で、抗エストロゲン作用による閉経後乳癌の治療薬である。レトロゾールの投与によりFSH分泌が促進され卵胞が発育する。排卵誘発剤として使用する場合、通常月経3~5日目より2.5mg(1錠)/日を5日間連続服用する。排卵率は90%で単一卵胞発育の割合が高い。クロミッド®と異なり子宮頸管粘液の減少や子宮内膜の菲薄化はほとんどない。レトロゾールを排卵誘発剤として使用する際は、本来の治療薬としての適応外使用であり保険適用がない。

 フェマーラ錠2.5mg、ノバルティスファーマ株式会社

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