妊孕能(にんようのう)の低下は、女性年齢が35歳くらいから顕著となります。女性年齢の上昇とともに妊娠率が低下し、流産率は上昇するため、生児を得る確率(生産率)が急激に低下します。2017年の我が国の生殖補助医療(ART)成績から、総治療周期当たりの生産率は、30歳:21.9%、35歳:18.9%、40歳:9.3%、41歳:7.0%、42歳:4.8%、43歳:3.1%、44歳:1.8%、45歳:1.0%、46歳:0.8%、47歳:0.2%です。妊娠後の流産率は、30歳:16.7%、35歳:20.3%、40歳:33.6%、41歳:39.2%、42歳:43.2%、43歳:49.3%、44歳:57.5%、45歳:62.6%、46歳:64.8%、47歳:76.9%です。高齢女性では胚の染色体異常率が高いことから、妊娠しても流産率が高くなり、生児を得る確率は低くなります。例えば、45歳女性の流産率は62.6%で生児を得る確率は1.0%となり、単純計算で45歳女性が生児を得るためには平均100回のART治療が必要となり、現実的に生児を得ることは困難です。
現代の不妊症診療は、加齢による卵子の妊孕能(にんようのう)喪失との戦いです。卵子の質は実年齢によるところが大きく、年齢とともに増加する胚染色体異常や細胞質低下に起因します。女性年齢が上がれば上がるほど生児を得る確率が著明に低下していくことから、生児を得るためには早期に検査や治療を開始する意義は大きいです。人生百年の時代となりましたが、老化した卵子を若返らせることは不可能です。生児を得ることを希望するすべての女性に、その事実を手遅れとなる前に知っていただきたいと思います。
参考記事:
生殖補助医療(ART)
女性の年齢と妊孕能(にんようのう)
参考文献:
1)日本産科婦人科学会:ARTデータブック、2015
https://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/
2) 生殖医療ポケットマニュアル、吉村泰典監修、医学書院、2014
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