大腸内視鏡検査

近年、日本人の寿命も延びて人生百年時代などと言われているが、なかには若くして進行癌を発症して四十代や五十代で亡くなる人も少なくない。予防できない癌であれば発症したのは運命だと思ってあきらめるしかないが、なかには子宮頸がん(HPVワクチン、子宮頚部細胞診)胃がん(ピロリ菌除菌)などのようにかなり予防できるようになったものもある。大腸がんも定期的な大腸内視鏡検査を受けることによってかなり予防できるようになってきた癌である。しかし、この事実を知らずに予防対策を全くとらずに大腸がんで亡くなる人はいまだに非常に多いのが現実である。

定年退職直前の2019年3月末に勤務先の市立病院で久しぶりに人間ドックを受けたついでに、頭部MRI肺ヘリカルCTPET-CTなど、今まで自分自身には実施したことがなかったいろいろな検査を受けてみた。そしたら、検査の直後に「頭部MRIで脳腫瘍の疑いがあったので脳造影MRI検査を早急に受けて下さい」と連絡がありショックを受け、さらに極め付きは「PET-CTで大腸にFDG集積が複数認められて大腸がんも否定できないので大腸内視鏡検査を早急に受けて下さい」という連絡もあった。

私自身、これまで脳腫瘍や大腸がんで亡くなった方々を数多く見てきた。今まで何とか元気でやってこられたけど、自分にもついに観念すべき時がやってきたのかと覚悟をして、定年退職直後の4月に入ってから脳造影MRI大腸内視鏡検査胃内視鏡検査などの追加精密検査を立て続けに受けた。胃内視鏡検査は検査時の嘔気が強く具合が悪くなってしまうのでその恐怖からここ10年近く敬遠していたが、この際、大腸内視鏡検査と同時に胃内視鏡検査もやってもらった。信頼する消化器内科のS先生にお願いして、近所のその先生の病院で検査して頂いたが、麻酔をしっかりかけてもらえたので検査は全然苦しくなくて楽だった。

追加精密検査の結果は、脳腫瘍なし、胃の病変なしだったが、大腸には6個の大腸ポリープがありそのうちの一つが病理検査で上皮内癌と診断された。大腸内視鏡検査をして頂いたS先生より、「腺腫の中に腺癌の部分が一部認められましたが、癌と腺腫の部分は今回内視鏡的に完全に切除され追加治療はありません」と言われた。

病理診断
管状腺癌(高分化型)、Tis (上皮内癌)
Colon and rectum; polypectomy. EMR & biopsy ….
1)Carcinoma in adenoma, tub1. pTis(M) (⑦)
2) Low grade tubulovillous adenoma (①②) and low grade tubular adenoma (④⑤⑥⑧), Group 3
3) Hyperplastic polyp (③)

所見
大腸 polypectomy、EMR 及び生検: 8個
①②Ra、0.9×0.7×0.5 cm及び小片組織、low grade tubulovillous adenoma 、切除断端陰性
③T、0.7×0.5 × 0.4 cm、hyperplastic polyp
④T、low grade tubular adenoma
⑤⑥S、low grade tubular adenoma、切除断端陰性
⑦Ra、1.1×0.7×0.8 cm
carcinoma in adenoma
手術の種類: EMR
腫瘍の占居部位: Ra
肉眼型分類: 0-I sp型
腫瘍の大きさ: 1.1×0.7×0.8cm
組織型: tub1 in tubular adenoma
壁深達度: pTis(M)
リンパ管侵襲: Ly0
静脈侵襲: V0
簇出: BD1
切除断端: HM0、VM0
※Adenoma 成分も切除断端陰性
内視鏡治療後の癌遺残: ER0
⑧Rb、low grade tubular adenoma

写真(大腸内視鏡検査)
右上: 過形成ポリープ
左上と左下: 腺腫
右下: 腺腫内腺癌

日本でも大腸がんで亡くなる人は非常に多く(年間5万人)、胃がんに次いで日本人男性の死因の第2位、女性では死因の第1位である。確かに私の親しかった知り合いの何人かは大腸がんで亡くなった。大腸がんの場合、癌化する前に大腸ポリープの腺腫の状態が何年かあって癌化する場合が多いので、定期的に大腸内視鏡検査を受けてポリープ切除していれば、大腸がんで死ぬ可能性をかなり減らせるらしい。つまり定期的に検査を受けることが癌の予防になる非常に珍しい癌ということらしい。私の場合は、もうすでに初期の癌になっていたわけだが、上皮内癌で大腸内視鏡検査の時に完全切除できたことが確認できれば追加治療の必要はないそうだ。大腸内視鏡検査はこの時生まれて初めて受けたんだけど、この検査を受けたことで寿命が延びたことは間違いなさそうで、今後はS先生にお願いして定期的に大腸内視鏡検査を受けたいと思っている。

人間ドックの追加精密検査の結果で自分の寿命がそんなに残ってない事が判明した場合には、残り少ない人生は中途半端に仕事をしないで、終活で有意義に過ごそうと考えていたが、結局、悪性と診断されたものの、間もなく死ぬ状態との診断には至らなかったので、定年退職後もあまり無理はしないで好きな仕事を続ける事にした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です