遺伝的な女性(XX)の原始生殖細胞は、発生5~6週頃に卵巣原基に移動して卵原細胞(卵祖細胞)へと分化する。卵巣内で卵原細胞が多数産生され、卵原細胞は複数回の体細胞分裂を起こし第一次卵母細胞となる。
第一次卵母細胞は周囲を一層の扁平上皮様細胞が取り囲んだ状態で原始卵胞が形成される。胎生期に第1次卵母細胞は減数分裂を開始し、第一減数分裂の前期の網状期でいったん休止し、この状態で出生し、思春期にいたるまでこのままである。卵細胞はすべてが減数分裂の途上にある。
思春期に入り、主席卵胞の卵子のみがLHサージにより第一減数分裂を再開し、排卵の直前に第一減数分裂が完了して第二次卵母細胞と第一極体になり排卵される。第二次卵母細胞はすぐに減数第二分裂を始めるが中期で再び休止する。
卵巣皮質にある原始卵胞数は、胎生20週頃で最大の700万個であり、出生時には80万個に減少し、月経開始時に30~40万個となり、閉経期頃には1000個程度となる。女性が一生のうちに排卵する卵子の数は約400個で、排卵しなった卵細胞はアポトーシスによる細胞死に至る。ほとんどの卵胞は排卵せずに閉鎖卵胞となる。
卵胞は形態により原始卵胞、一次卵胞、二次卵胞に分類される。原始卵胞は第一次卵母細胞とそれを囲む一層の扁平な上皮とからなる。一次卵胞は一層の立方状の顆粒膜細胞に囲まれる。二次卵胞は数層の顆粒膜細胞に囲まれる。二次卵胞のなかで、顆粒膜細胞から分泌された卵胞液により囲卵腔が形成されたものが胞状卵胞である。
原始卵胞から一次卵胞へ発育するのに約150日間、一次卵胞から二次卵胞へ発育するのに約120日間を要する。二次卵胞は約85日間で排卵直前の成熟卵胞(グラーフ卵胞)まで発育する。
最初の原始卵胞から前胞状卵胞に至る発育は,ゴナドトロピンに全く依存せず自律的に進行する(ゴナドトロピン非依存性)。続く前胞状卵胞から小卵胞腔を有する初期胞状卵胞への移行期は、卵胞がゴナドトロピンに反応し始めるものの生体内での発育には必ずしもゴナドトロピンを必要としないといわれている (ゴナドトロピン感受性)。最終的に胞状卵胞がリクルートされ選択→発育→排卵に至るプロセスは、ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)が完全に主導する(ゴナドトロピン依存性)。卵胞刺激ホルモン(FSH)に対する受容体は前胞状卵胞の段階で発現するが,卵胞が実際にゴナドトロピン依存性に発育するのは胞状卵胞以降である。すなわち前胞状卵胞から胞状卵胞への移行期は,卵胞発育を制御するメインシステムが,卵巣内の局所調節因子からゴナドトロピンへと切り替わる重要なターニングポイントと考えられる。
単一排卵機構:
ヒトは月経周期のにおいて1つの排卵が起こる単一排卵機構が特徴的である。月経周期の初期の卵巣には3mm前後の十数個の二次卵胞が存在し、FSH依存性に発育成熟するが、卵胞期中期以降FSHの分泌が減少し、この変化に耐えられる1個の卵胞(主席卵胞)のみが閉鎖を免れて成熟卵胞(グラーフ卵胞)となり排卵に至る。成熟卵胞以外は閉鎖卵胞となる。
参考Webサイト
不妊College(データに基づく不妊治療の基礎知識)、フェリング・ファーマ株式会社
参考文献:
1)データから考える不妊症・不育症治療、竹田省ら編、メディカルビュー社、2017
2)生殖医療ポケットマニュアル、吉村泰典監修、医学書院、2014
3)今すぐ知りたい!不妊治療Q&A、久慈直昭ら編、医学書院、2019
4)基礎からわかる女性内分泌、百枝幹雄編、2016
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