受胎前後における葉酸摂取により神経管閉鎖障害の発症リスクが低減する

神経管閉鎖障害(NTDs : neural tube defects) 
葉酸(folic acid)

葉酸は水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種です。数多くの疫学研究から、受胎前後における葉酸摂取により胎児の神経管閉鎖障害(NTDs)の発症リスクが低減することが報告されています。

神経管閉鎖障害は、神経管が作られる妊娠4~5週頃におこる先天異常です。我が国では、出生1万人に対して約6人の割合でみられます。神経管の下部に閉鎖障害が起きた場合、これを「二分脊椎」といいます。二分脊椎の起きた部位では、脊椎の骨が脊髄の神経組織を覆っていないため神経組織が障害され、下肢の運動障害や膀胱・直腸機能障害がおきることがあります。神経管の上部で閉鎖障害が起きると、脳が形成不全となり、これを「無脳症」といいます。無脳症の場合、流産や死産の割合が高くなります。

現時点で、神経管閉鎖障害の発症予防の有効性が示されているのは葉酸のみですが、神経管閉鎖障害の発症要因は多因子であり、妊娠前から葉酸を摂取しても、すべての神経管閉鎖障害の発症が予防できるわけではありません。

米国やドイツなど欧米諸国では減少傾向にある二分脊椎症ですが、日本においては1974年には10,000人に2名未満の発症率であったのに対し、2010年には10,000人に6名近くとなっており、発症率が減っていません。

プレナタル・ナビ(バイエル薬品株式会社)より
プレナタル・ナビ(バイエル薬品株式会社)より

産婦人科診療ガイドライン・産科編2020
CQ105 神経管閉鎖障害(二分脊椎、脳瘤、無脳症等)と葉酸の関係について説明を求められたら?

Answer
1.妊娠前から市販のサプリメントにより1日0.4mgの葉酸を摂取することで、児の神経管閉鎖障害発症リスクの低減が期待できると説明する。(B)
2.特に神経管閉鎖障害児の妊娠既往がある女性に対しては、医師の管理下に妊娠前から妊娠11週末まで、1日4~5mgの葉酸を服用することで、同胞における発症リスクの低減が期待できると説明する。(B)
3.神経管閉鎖障害の発症は多因子によるものであり、葉酸摂取不足のみが発症要因ではないと説明する。(B)

参考文献
1)産婦人科診療ガイドライン・産科編2020、日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会、2020
2)国立保健医療科学院、葉酸情報のページ、Q&A
https://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai/yousan/Q_A/q_a.html

3)葉酸と二分脊椎症、プレナタル・ナビ、バイエル薬品株式会社
https://www.prenatal-navi.jp/cat04/2016-11_what-is-spina-bifida.php

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