受精(fertilization)

排卵により卵丘細胞・卵子複合体(COC)が腹腔内に放出され、その後卵管内に入る。卵子は第二減数分裂中期で停止し、卵管膨大部で精子を待つ。

一方、腟内に射精された2~3億個の精子は早いものは5分後に卵管内まで到達し、最終的には200個以下が卵管膨大部に達する。

精子は、卵胞液の刺激を受けると受精能を獲得(capacitation)する。受精能獲得完了の指標として精子の運動性の変化があり、hyperactivationと呼ばれる。精子鞭毛の大きな振幅と非対称性を特徴とする。この運動は透明帯進入において物理的推進力となると考えられる。卵丘細胞を通過し透明帯(zona pellucida)に近づいた精子は先体反応(acrosome reaction)を起こす。先体反応により、精子の頭部から酵素の放出が起こって精子が透明帯を通過できるようになる。ただ一つの精子が透明帯を貫通し、卵子に横対横で接着・結合し、狭義の受精が成立する。

卵細胞内では反復性かつ一過性の細胞内カルシウム濃度上昇(Ca2+オシレーション)が起きる。Ca2+濃度の上昇は即時的に卵巣表面顆粒の開口分泌を誘導し、透明帯蛋白ZP3の精子結合部を分解する。これにより次の精子が先体反応を起こせず、多精拒否機構が成立する。

細胞内カルシウム濃度の上昇により停止していた卵の減数分裂が再開し、第二極体(second polar body)が形成され、減数分裂が完了する。卵子由来の遺伝子が入っている雌性前核(female pronucleus)と、精子由来の遺伝子が入っている雄性前核(male pronucleus)が形成され、最終的にこの2個の前核が融合して広義の受精が完了する。

卵活性化(egg activation)
受精後に起きる表層顆粒の開口分泌第二減数分裂の再開前核形成などの一連の現象を卵活性化という。卵細胞内に取り込まれた精子ファクター(PLCζ)は、小胞体からのCa2+遊離を誘導し、遊離されたCa2+は他の小胞体からのCa2+遊離を次々に引き起こし、細胞内カルシウム濃度は上昇・下降を繰り返す。これをCa2+オシレーションといい、前核形成まで継続する。

参考文献:
1)データから考える不妊症・不育症治療、竹田省ら編、メディカルビュー社、2017
2)生殖医療ポケットマニュアル、吉村泰典監修、医学書院、2014
3)今すぐ知りたい!不妊治療Q&A、久慈直昭ら編、医学書院、2019

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