早発卵巣不全(POI)

primary ovarian insufficiency (POI)
premature ovarian failure (POF)

早発卵巣不全(POI)とは、40歳未満で卵胞発育不全による卵巣性無月経を呈する疾患で、卵胞から分泌されるエストロゲンが欠乏し、のぼせ、発汗などの更年期症状を呈する。

早発卵巣不全(POI)の診断:
① 年齢40歳未満で、4カ月以上の無月経
 続発性無月経、第二次性徴がある
② ゴナドトロピン高値、エストロゲン低値
 少なくとも1カ月以上の間隔で2回測定し、高ゴナドトロピン値(血中FSH>25mIU/ml)、低エストロゲン値を確認する

残存卵胞数の診断:
現在のところ、POI症例において、残存卵胞の有無を正確に診断できる方法はない。抗ミュラー管ホルモン(AMH)値は参考になるが、POIのほとんどの症例で測定感度以下となる。経腟超音波検査による胞状卵胞数計測(AFC)も有用である。かつては卵巣組織生検が行われていたが、卵巣内にわずかに残存している卵胞は散在して存在しており、微量な生検検体の組織検査では残存卵胞の有無を診断することは困難で、現在は行われてない。

POIの原因は不明のものが多いが、ターナー症候群などの染色体異常自己免疫疾患、卵巣手術や化学・放射線療法による医原性原因など多岐にわたる。卵巣内の卵胞の急激な減少に起因する病態である。卵巣内の残存卵胞数が1000個以下になると卵胞の活性化が停止して卵胞発育が起こらなくなり、卵胞顆粒膜細胞由来のエストロゲンが産生されなくなり、その結果、無排卵、無月経となる。POIの頻度は、30歳未満の0.1%、40歳未満の1%にみられ、無月経患者の5~10%を占めるとされる。POIでは、年齢による閉経婦人とは異なりまれに自然回復例がある

POIの治療:
POIの診断後でもまれに予測できない間欠的卵巣機能回復例がある。しかし、患者が挙児を希望する場合は速やかな治療の介入が望ましく、早期に生殖補助医療(ART)を専門とする医師に紹介する。最近では、休眠原始卵胞覚醒(IVA)など研究的臨床手技も報告されている。卵胞枯渇がある患者ではARTによっても不成功に終わる割合が高い。必要時には心理学的支援を含めた相談やカウンセリング受診も提案する。

今後の挙児希望がない場合はホルモン補充療法を行うことが基本であり、一般女性の閉経年齢である50歳頃まで継続することが望まれる。

参考記事:
無月経の分類
女性の年齢と妊孕能(にんようのう)
卵巣予備能の検査

参考文献:
1)産婦人科診療ガイドライン・婦人科外来編2020、日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会、2020
2)基礎からわかる女性内分泌、百枝幹雄編、2016

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