ゴナドトロピン療法は多胎と卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高いですが、そのリスクを最小限に抑える方法がFSH低用量漸増法です。FSH製剤を低用量で開始し、原則1週間ごとに診察し、主席卵胞の発育がみられるまで投与量を少しずつ増量する方法です。従来の方法と比較すると卵胞発育に時間がかかり、連日注射することによる肉体的な負担がありますが、副作用の発生率は減少します。4個以上の排卵可能な発育卵胞を認める場合は多胎やOHSSのリスクがあり、その周期のhCGもしくはGnRHアゴニスト点鼻薬などでの排卵誘起をキャンセルします。
FSH 低用量漸増療法ではFSH の投与日数が長期化する傾向があるので、通院の負担を軽 減するために在宅自己注射の導入が求められていました。2008年に FSH 製剤の自己注射が認可され、ペン型の注入器も発売されました。自己注射による FSH 低用量漸増療法を安全に行うコツは以下の通りです。
① 初期投与量50または75単位/日(特に第1周期)。
② 初期投与量を7日間または14日間維持する。
③ 増量する場合は初期投与量の1/2を加える。
④ 卵胞計測は投与開始の1週間後、その後は週に2~3回程度。
⑤ 1cm を超えた卵胞の発育速度は1日2mm 程度と予測する。
⑥ 16mm を超えた卵胞数が4個以上の場合には hCG 投与をキャンセルする。
参考文献:
1) データから考える不妊症・不育症治療、竹田省ら編、メディカルビュー社、2017
2) インフォームドコンセントのための図説シリーズ 不妊症・不育症(改訂3版)、苛原稔編、2016
3) 新しい排卵誘発治療、松崎利也、日産婦誌61巻9号研修コーナー N325、2009
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