luteal phase defect
luteal insufficiency
胚が着床するためには、プロゲステロン、エストロゲンの2種類のホルモンが十分に必要です。これらのホルモンは、排卵後に卵巣に形成される黄体から分泌されます。黄体からのプロゲステロンとエストロゲンの分泌不全により、子宮内膜の分泌性変化が適切に起こらないものを黄体機能不全という。妊卵の着床障害の原因になると考えられる。
実際には、黄体からのホルモン分泌に異常がなくても子宮内膜の変化に異常がある場合もあり、子宮内膜自体の異常も含めて黄体機能不全を取り扱っているのが現状である。すなわち広義の黄体機能不全(luteal phase defect)には、黄体からのホルモン分泌に異常がある狭義の黄体機能不全(luteal insufficiency)と、黄体からのホルモン分泌には異常がないが分泌期子宮内膜自体に異常がある子宮内膜機能不全が含まれると考えるほうが理解しやすい。
黄体機能不全は、不妊症、反復流産の原因として重要である。頻度は、不妊患者においては10~50%、反復流産患者においては25~60%で認められている。
天然型のプロゲステロンは経口投与した場合、肝臓で代謝されその約90%が失活する。そのため内服薬はすべて合成型(プロゲスチン)である。それに対して、注射薬、腟剤は天然型でも肝臓での代謝を受けず、子宮に作用できる。注射薬より投与が容易である腟剤や外用ゲル剤が我が国でも最近承認され、生殖補助医療(ART)における黄体補充に使用されている。
黄体機能不全の診断:(統一した診断基準はない)
① 基礎体温上、高温相が10日(~12日)以内
② 黄体期5~7日目のプロゲステロン値が10ng/ml未満
③ 子宮内膜日付診の異常
のうちいずれか1つでも該当する場合を黄体機能不全と診断する
黄体機能不全の治療:
黄体機能不全は単一の病因による疾患ではなく、多くの病態や病因が含まれている。黄体機能不全の原因を考え治療に臨むことが重要である。
1)高プロラクチン血症を伴う場合
カベルゴリン(カバサール®)、ブロモクリプチン(パーロデル®)、テルグリド(テルロン®)などのドパミン作動薬の内服治療を行う。
2)高プロラクチン血症を伴わない場合
① 黄体補充療法
a)hCG投与による黄体賦活
黄体期2~6日目の間にhCG 3000単位を2回程度投与する。
b)プロゲスチン製剤の投与
(1) 注射薬(黄体期に週2回使用する)
ヒドロキシプロゲステロン(オオホルミンルテウムデポー®、プロゲデポー®)
(2) 経口薬(黄体期2~3日目より10日間使用する)
ジドロゲステロン(デュファストン®)、メドロキシプロゲステロン(プロベラ®、ヒスロン®)、クロルプロマジノン酢酸(ルトラール®)
② 卵巣刺激療法
クロミフェン療法、ゴナドトロピン療法
③ 卵巣刺激療法+黄体補充療法
参考文献:
生殖医療ポケットマニュアル、吉村泰典監修、医学書院、2014
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