たのうほうせいらんそうしょうこうぐん
PCOS: polycystic ovary syndrome
PCOSは生殖年齢女性の5~10%にみられ、症状としては、月経不順、にきび、多毛、肥満などがあり、卵胞が発育するのに時間がかかり排卵しにくいため不妊症の原因になる場合があります。卵巣の超音波検査で多数の小卵胞が卵巣の外側に連なって認められます(多嚢胞性卵巣、ネックレスサイン)。
PCOSの原因は何ですか?
脳にある下垂体から分泌されるLH(黄体形成ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)という2つのホルモンが排卵に関わっていますが、PCOSではこのバランスがくずれ、LHばかりが過剰分泌されることによって、排卵がうまく行われなくなります。またPCOSでは男性ホルモンが増加している場合があります。
PCOSの診断はどのように行われますか?
PCOSは正常に近い症例から典型的なものまでその程度はさまざまです。診断は、問診、卵巣の超音波検査、血液検査によって行われます。
診断基準(日本産科婦人科学会、2007)
①月経異常(無月経、月経不順)
②多嚢胞性卵巣(超音波検査)
③血中男性ホルモン高値、またはLH基礎値高値かつFSH正常
の3項目をすべて満たせばPCOSと診断されます。
PCOSの治療はどのように行われますか?
PCOSの治療は、現在妊娠を希望している場合と、そうでない場合とで異なります。また、PCOSで肥満のある例ではまず体重の管理を十分に行います。
1)妊娠を希望される場合
① 排卵誘発法
経口排卵誘発薬であるクロミッドを第一選択薬として使用します。クロミッドで排卵しない場合は、症例に応じて、クロミッド+メトホルミン、レトロゾール、ゴナドトロピン療法、FSH低用量漸増法などによる排卵誘発を行います。PCOSにおけるゴナドトロピン療法では卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎のリスクがあり注意が必要です。
② 腹腔鏡下卵巣多孔術
腹腔鏡下に卵巣の表面に多数の穴をあけて排卵しやすくする手術です。OHSSや多胎のリスクが少ないというメリットがあり、手術後に自然排卵するようになったり、クロミッドに対する反応性がよくなったりしますが、効果は半年~1年ほどです。
③ 体外受精
OHSSの症状(卵巣腫大、腹水、胸水、血栓など)は妊娠成立時により悪化と長期化を生じやすいので、体外受精では新鮮な胚移植を回避して全胚凍結とすることがあります。OHSSの症状が落ち着いてから、受精卵を1〜2個子宮内に移植することで安全に治療することができます。
2)妊娠を希望されない場合
PCOSの患者さんは月経異常を放置していると子宮体がんのリスクが高くなることが知られています。無月経や無排卵などの月経異常の状態が続く場合は、子宮体がんを予防する目的でホルモン療法が必要となります。プロゲステロン製剤を毎月7~12日間内服して月経を誘発する黄体ホルモン補充療法(ホルムストローム療法)が基本でこれを長期的に行います。月経異常と同時に多毛やにきびの症状を改善したい場合に低用量経口避妊薬を用いることもあります。
参考:
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
排卵誘発法
経口排卵誘発剤
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
FSH低用量漸増法
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