排卵誘発法

視床下部性排卵障害の治療法
体重減少性ストレス性高プロラクチン血症性など、排卵障害の原因が明らかな場合にはそれらの原因を取り除く必要がありますが、そうでない場合には以下の排卵誘発法を行います。

クロミフェン療法:
クエン酸クロミフェン(クロミッド®)は、視床下部に働いてゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の放出を促進する作用があります。GnRHは下垂体からの黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促進し、排卵を回復させます。月経周期の5日目から50mg~100mg(1錠~2錠)/日を5日間連続服用します。クロミッド®は自然周期の排卵とは異なり、卵胞径20~25mmまで発育してもLHサージが起こらないことがあり、その場合はヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)製剤もしくはGnRHアゴニスト点鼻薬などで排卵誘起を行います。また、クロミッド®を長期にわたり使用すると子宮内膜が菲薄化し頸管粘液が少なくなり、かえって妊娠しにくくなります。したがって、クロミフェン療法で妊娠が成立しない場合には6カ月を目処として中止し、他の治療法(ゴナドトロピン療法、体外受精など)へと移行します。

アロマターゼ阻害薬(レトロゾール):
レトロゾール(フェマーラ®)は、抗エストロゲン作用による閉経後乳癌の治療薬です。薬理作用としてはアロマターゼ阻害作用を介してエストラジオール濃度の低下をきたします。低エストラジオール状態は正のフィードバック作用によりFSH分泌を促進し、排卵を誘発します。通常月経3~5日目より2.5mg(1錠)/日を5日間連続服用します。排卵率は90%で単一卵胞発育の割合が高いです。クロミッド®と異なり頸管粘液の減少や子宮内膜の菲薄化はほとんどありません。アロマターゼ阻害薬を排卵誘発剤として使用する際は、本来の治療薬としての適応外使用であり保険適用がありません。

ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)療法
ゴナドトロピン療法は、ヒト閉経期性腺刺激ホルモン(hMG)製剤または卵胞刺激ホルモン(FSH)製剤ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)製剤を用いて、直接的に卵巣に作用する治療法であり、強力な排卵誘発作用があります。従来のゴナドトロピン療法では、多胎卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高いことが知られています。

FSH低用量漸増療法
従来のゴナドトロピン療法は多胎卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高いです。そのリスクを最小限に抑えた方法がFSH低用量漸増法です。FSH製剤を低用量で開始し、原則1週間ごとに診察し、主席卵胞の発育がみられるまで投与量を少しずつ増量する方法です。従来の方法と比較すると卵胞発育に時間がかかり、連日注射することによる肉体的な負担がありますが副作用の発生率は低くなります。4個以上の排卵可能な発育卵胞を認める場合は多胎やOHSSのリスクがあり、その周期のhCGもしくはGnRHアゴニスト点鼻薬などでの排卵誘起をキャンセルします。

参考:
経口排卵誘発剤
ゴナドトロピン製剤
排卵誘起薬(hCG、GnRHa)
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
FSH低用量漸増法

参考文献:
1)データから考える不妊症・不育症治療、竹田省ら編、メディカルビュー社、2017
2)インフォームドコンセントのための図説シリーズ 不妊症・不育症(改訂3版)、苛原稔編、2016

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