高PRL血症 乳汁漏出性無月経
プロラクチン(PRL)は下垂体前葉で分泌されるホルモンの一つで、乳汁分泌作用、性腺抑制作用を持ちます。分娩後、乳児の母乳吸引刺激によりPRLの分泌量が増加し乳汁産生を増加させます。 また、卵巣機能を抑制することで産褥性無月経を誘発します。また、妊娠や分娩と関連のない時期に高PRL血症をきたすと乳汁が漏出し、排卵障害を伴う場合が多く、典型的な例では乳汁漏出性無月経となります。
測定系によって差異を認めるものの本邦女性における血中プロラクチン(PRL)値の正常値は約30ng/mL以下であり、それをこえるものを高PRL血症と称します。PRLは排卵期から黄体期にかけて分泌が盛んになるので月経期での採血が推奨されます。
高PRL血症の原因
①生理的な原因:
ストレス、運動、妊娠、乳頭刺激など
②PRL産生下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)
③間脳障害:
キアリ-フロンメル症候群
アルゴンツ-デル・カスチロ症候群
視床下部腫瘍
④薬剤性:
・中枢神経系薬剤
クロルプロマジン、ハロペリドール、イミプラン、アミトリプチリンなど
・胃腸薬
メトクロプラミド(プリンペラン)、スルピリド(ドグマチール)、シメチジンなど
・血圧降下剤
メチルドパ、レセルピンなど
・ホルモン製剤
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、エストロゲン製剤など
⑤内分泌疾患:
原発性甲状腺機能低下症
末端肥大症
多嚢胞性卵巣症候群
⑥腎不全
⑦その他
高PRL血症の治療:
①薬剤性高PRL血症
休薬ないしは薬剤変更を処方科と相談します。
②甲状腺機能低下症
甲状腺の原因疾患の加療による甲状腺ホルモンのコントロールでPRL値も正常化します。
③下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)
視機能障害がある場合、患者の手術希望が強い場合は脳神経外科との相談が必要となります。手術対象とならない場合は、カベルゴリン(カバサール)、ブロモクリプチン(パーロデル)、テルグリド(テルロン)などのドパミン作動薬の内服治療が行われます。
④機能性高PRL血症
ドパミン作動薬の内服治療が行われます。挙児希望がない場合は積極的なドパミン作動薬の内服は必要とされません。挙児希望がある場合は、排卵が認められていても黄体機能不全を伴うこともあり、血中PRL値の正常化が考慮されます。
参考文献:
1)岡井崇・綾部琢哉(編)、標準産科婦人科学、第4版、医学書院
2)生殖医療ポケットマニュアル、吉村泰典監修、医学書院、2014
3)インフォームドコンセントのための図説シリーズ 不妊症・不育症(改訂3版)、苛原稔編、2016
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